誰かを救おうとすればするほど命がなくなる

それは私の罪

彼の代償は、私の生きる道






穢れた願いに 最後の涙を
-Bloody Alchemist-






「何だよ大佐、わざわざ呼び出して」


東方司令部のソファーに堂々と座っている金髪の少年。
彼の名をエドワード・エルリック、鋼の錬金術師である。

「すまないね」
「すまないならとっとと本題喋ろよ」
「おや、それはすまなかったね」

司令の椅子に座ってにこやかに笑うのはロイ・マスタング。
これでも大佐である。

「突然で悪いんだが、君に折り入って頼みがあるんだよ」

大佐からの頼み事なんて気色悪い。

「……なんだよ」
「しばらくの間、とある人物と一緒に行動して欲しいのだが」
「あ?!」

エドはソファーに付いてた肘をガクッと落として目を鋭くさせた。

「なんだよそれ……また護衛か?」
「いやいや、そんなものじゃない。ただ旅の仲間だと思ってくれればいい」
「余計に意味がわからん」

つり目がよけいに傾いた。

「まあ聞きたまえ。その彼女はあるものに興味を持っていてね」
「彼女?!女かよ?!」
「古いな、鋼の。男女差別はよくないぞ?」
「別にそういうつもりはねぇけど……」

エドは口を尖らせた。

「君もその『興味のある事』というのを知ったら嫌でも連れて行くさ」
「で、何だよ?もったいぶらずに早く言えよ」

大佐が怪しくニヤついた。

「……人体錬成だよ」
「な……?!」

エドの顔色が明らかに変わった。

「何で……そんな奴と!」
「あぁ、誤解しないでくれ。それに彼女はただの研究者だ、錬金術師でなくね……」
「……………」
「鋼のといたら何かと研究がはかどりそうだからね、私が進めたんだよ」
「オイ!勝手に提案すんなよ!」
「もう決めた事でね、彼女ももうすぐ来る頃だろう」


コンコン……


「ほら来た」
「…………」

エドが振り向くと『彼女』が現れた。

「…………失礼します」

長い金髪だった。
離れててもわかる鮮やかな翡翠の瞳。
それを引き立たせるのは整った顔と白い肌。
いや、白いなんてものじゃない。ひどく青白いと言った方が正しい。

年は若い。もしかしたら俺と同じくらいかも知れない。
肌の色や下向きがちな目からはとても活発そうには見えない。


「……フェリアエンディード少尉……ただ今到着致しました」

敬礼が何となくおぼつかない。

「やぁ、待っていたよ。こっちがエドワード・エルリック、鋼の錬金術師だ」
「!……錬金術師………鋼の?!」

驚いた顔が俺を見た。

研究者だからさすがに俺の事は知っているらしい。

「……あなたが?」
「……そうだ」

「小さい」とか感想言ってくれるかと思って睨み付けてたが、それはなかった。
むしろ、何故か俺を見て苦しそうな顔をしている。

「…………?」
エンディード少尉、君はこの鋼のと行動してもらう、いいな?」
「…………はい」

少し間のあいた返事。

「おい!俺の意見無視かよ!こんな……!」

指を差してエドの動きが止まった。


まじまじと見ると綺麗な顔をしてる。
大人しい感じの子ってのはあまり俺の周りにはいないタイプだな……


「こんな……何かね?」

何となく大佐の顔が嫌味っぽく笑ってやがる。

「うっ……と、とにかく俺は嫌だかんな!」

バンッ!と大佐の机を思いっきり叩いてやった。

「いいのかね、そんな事言って」
「な、なんだよ……」
「これ以上ダダこねると命令違反で処罰するぞ」
「!!ずりぃ!!!」

エドは頭を抱えた。

「ま、そう言う事だ。頼んだよ」

恨みがましく大佐を睨むとひらひらと掌が待っていた。


く、くそぅ!!

フェリアとかいう奴はただ無表情で突っ立ってるだけだし……!


「……よろしく、お願いします……」
「……フンッ!行くなら行くぞ!」

「あぁ、待ちたまえ」

フェリアを促そうとすると大佐からまたしてもお声がかかった。

エンディード少尉とは少し話がある。外で待っていてくれ」
「…………」


怪しい!絶対に怪しい!!


そう思いつつもエドは重い足取りで出て行った。
大股で響く足音がだんだん小さくなっていく。




「……いいんですか?あんな事言って」

フェリアの顔が無表情になった。

「あぁ、研究者って事かい?中々いい演技だったと思うが」
「あの錬金術師と行動しろって?」
「そうだ」
「…………それで、私にどうしろと?」

大佐は立ち上がり窓の風景に見入った。
太陽が全身を照らした。

「……生きればいい、フェリア。たとえどんな結果になったとしても……」

その背中はどことなく悲しそうな影を落としていた。











「遅いぞ!何やってたんだよ!」
「……大佐と話を」

かみつくような勢いで怒鳴られた。

「まぁまぁ、兄さん。で、この人が一緒に行く人?」
「そうだ!」
「よろしくね、僕はアルフォンス・エルリック。アルでいいよ」

アルは優しく手を差し伸べた。

「……よろしく、フェリアです」
「挨拶すんだなら行くぞ!」
「兄さん、何でそんなにカリカリしてんのさ」

ずっと背中を向けていたエドが振り返った。

「言っとくが、俺はお前を信用してないからな!」
「兄さん!何て事言うんだよ!」
「当たり前だろ!人体錬成に興味があるなんて……ロクな奴じゃないんだよ」

エドの顔が曇った。


そうか、この人も過去に何かあったんだ。
人体錬成で……


「……私は……お二人の後を付いていくっていう風でいいから」
「わかってればいいんだよ」
「兄さん!」
「なら早く行くぞ!」

エドは先に走りだした。

「あっ兄さん!もう……子供なんだから。行こうか、フェリアさん」
「…………はい」


ここから3人の旅が始まった。











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やってしまいました。
ま~た何かヒロインの性格は暗めだし……