いつからこうなったんだろう……


あなたはもう「友達」ではないんです。


それでもあなたは「友達」だから。






friends "in Arpeggio"







「……ってば。……フェリアってば!」
「え?!あ、ごめん……」

バッと顔を上げるとウィンリィが至近距離にいた。

「どうしたの?最近ぼ~っとしてばっかだけど……」
「え?そんな事ないよ……?」
「ホントに?」
「う、うん」
「……ならいいんだけど」


ウィンリィと私は幼なじみだ。
だから、今は図書館で調べ物をしているエドとアルもそれに当てはまる。


「ったく……何で毎日毎日私らが図書館まで迎えに行かないといけないのよ~」

ウィンリィは悪態をついた。

「あの2人は時間なんか関係ないからね」
「ほんっと!飽きないのかしら……」
「ウィンリィだって~機械鎧に関する事なら寝食忘れるでしょ」
「んなっ!私をあのミジンコ馬鹿と一緒にしないでよ!」

そう突っかかってくるのに表情は怒っていない。

「はいはい。早く行かないと宿の夕飯に遅れるよ?」
「あ、フェリア!おいてかないでよ~!」


私は作り笑いをした。






「……でね!そこのケーキがすっごく美味しかったんだって!」
「……お前さ、半分観光気分だろ」
「うふふ~~わかる?」

ウィンリィは息継ぎもロクにしないで話し続けた。
4人でとる円卓のいつものやり取りだった。

「いつんなったら帰るんだよ……機械鎧の修行すんじゃねーの?」
「いいじゃな~い。一応勉強してるし、せっかくだから観光したいじゃない?」

ウィンリィは目をキラキラさせて言った。

「……サイデスカ」

その調子にエドは呆れた。

「それに、あんたすぐ機械鎧壊しちゃうんだから。整備する方の身にもなってよね!」
「へ~い、感謝してるって」
「心がこもってない!」
「ドウモアリガトウゴザイマス!機械ヲタクさん!」
「ソレハドウイタシマシテ!チビ錬金術師さん!」
「誰が豆粒ドチビだああぁぁ!!」

エドは身を乗り出して叫んだ。

「あんたよ!名前も『チビワード』にしたらいいんじゃないの?!」
「ムキィーー!!!フェリア、何とかしろよこのオタク!」
「え……?!」

急に話をふられてフェリアは動揺して何も言えなかった。

「エド!身長の事を棚に上げないで下さ~い!」
「んだとぉ~~!!!」
「まあまあ……兄さん、ウィンリィ、他の人が見てるから……」

横からアルがなだめにはいった。
2人ははっと辺りを見渡すと、いくつもの視線を感じて肩を小さくした。


息ぴったりのその姿を見てフェリアは苦笑した。
そして胸に痛みが走る。

こんな会話はもう何年も見慣れていた。
エド達が旅に出てから機械鎧を直しに帰ってくるまでの月日以外、私の思い出は4人で過ごした事が大部分を占める。

羨ましい、なんて言葉はもう数年前から使うのをやめた。


フェリア……本当に大丈夫?」

はっと気が付くとまた心配そうなウィンリィの顔があった。

「え……?だ、大丈夫だよ?」
「何だ、具合でも悪いのか?」

久しぶりにエドと目があった。

「何でもないよ!ちょっと考え事を……」

必死に平静を保って笑った。

「……そうか」

それだけ言うとエドはすぐに目線を下ろした。


私には物静かな雰囲気を見せるエド。
それは多分私が悪いから。

いつからだろう……昔みたいにエドと話せなくなったのは。
子供の頃の私だったらウィンリィみたいに遠慮なく言いたい事を言っていたのに。


エドとも……普通にはしゃいでいた。


「……ごちそうさま」

フェリアはよろよろと立ち上がった。

「あれ?もう食べないの?」
「うん……食欲なくて」
「……そう」


嘘、こんな自分が嫌になっただけ。
普通に出来ない自分が。
ウィンリィの顔すらまともに見れない私が……

席を離れて一度私がいたテーブルを振り返った。
そこには私がいなくても楽しそうに過ごしている3人。
ウィンリィが何かを言ったのをきっかけにどっと笑いがおこった。

彼女の笑顔、彼の自然な言葉、それが私の胸にのしかかった。
アルも不自然なく会話に溶け込んでいる。


……違った。
昔もこうだった。

幼なじみと言っても、私は後から3人と友達になった。
今よりかは仲良くやってたけど、それでも3人の輪には完全には入れなかった。

あの3人は特別な絆があるみたいで、昔もこんな風に見てた事があった。
今と持ってる感情は違うけど、私は……いつも独りだった。

重なる、子供の私と、気付いてしまった今の私。

エドは笑う。
子供みたいに表情豊かな顔で。
傍にいるのはいつも兄弟のアルと、そしてウィンリィ……




いつからか、彼は友達ではなくなった。


だって……気付いてしまったから。


……私は、エドが好きだと気付いてしまったから……










Top Next



Arpeggio(アルペジオ)。
音楽用語で「分散和音の奏法」を表します。
各和音を同時に演奏するのではなく、一つ一つ順番に演奏する事を言います。
それなのにいい音色が出来上がる。
『友達』の中でのバラバラの和音は、どんな風に混ざり合うのでしょうか。ウフv

ちなみに、私は音楽に興味はありますが知識はありません!
この説明はおかしい!って方、いましたらお教え下さいな。

また主人公は暗めです。
少女マンガだと思って温かく見て下さいね。