『秋』 ~ロイ・マスタング~
「大佐!」
「ん?」
私の上官は全く、完璧なのか無能なのかわからない。
「大佐、コートを着てください!」
「そんなに寒くないからなくてもいい」
「でももう秋ですから……夜になると冷えますよ?」
今日の会議は長引きそうなんですから、と付け加えた。
「……そうか」
大佐は何かを考え込むようにしながらもコートを受け取ってくれた。
これでやっと家に帰れる、と私は安堵の息をついた。
「……え?」
何故か、大佐の黒いコートは私の肩にかけられていた。
「なら君が着ていきたまえ、夜は冷える」
「え、ですがこれは大佐の……!」
そう言って私はまたコートを突き出した。
「そうか」
……私の上官は何を考えているかわからない。
大佐はふっと軽く笑い、そしてコートに袖を通した。
「え……!」
急に腕を引っ張られ、私は大佐の胸の中に収まってしまった。
「では2人とも入ればいい」
「や、あ、あの…大佐……!」
「それならどちらも寒くはないだろう?」
真上から聞こえる低い声に私の頬は真っ赤に染まっていく。
「会議室についたらこれを君に貸す。そして会議が終わった頃に君がまた私を迎えに来てくれ」
「え、それは……」
他の人が迎えに行く……そう言おうと思った時に、大佐の顔がどんどん近づいてくる。
不敵な笑顔を浮かべ、耳元で囁いた。
「夜は冷えるんだろう?だったら、君が温めてくれ」
その日、大佐が有能だという事を思い知らされました……
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クサすぎる大佐。でもこういう人も結構好きだったり。