silent love
じとぉ~~
今の空気にはそれが一番当てはまるよ。
原因?そんなもの決まってる。
2人だけでやってくれるなら僕も別にいいんだけど、
そうはいかないんだからタチが悪い。
しーん。
フェリアは窓際で1人本をパラパラめくっている。
ふくれっ面なもんだから可愛い顔が台無しだ。
一方正反対の机で谷のように深い皺を眉間に寄せているのは僕の兄さん。
いつものように本に熱中してるけど、明らかに機嫌が悪い。
その板挟みなのが僕。
疲れるなぁ……
「ねぇアル!!」
「……何、フェリア?」
やっぱり来た。
「ちょっと休憩!そこら辺散歩してこようよ!」
有無を言わさぬ満面の笑顔。
「い、いいけど……兄さんは、どうする?」
一応聞いてみる。
でも案の定、
「……行かん」
あ~あ、いつもと同じパターン。
いい加減成長してよ2人とも。
「行こ、アル!エドは読書で忙しいらしいからねぇ~~」
あ、今日はフェリアの嫌味が追加された。
「じ、じゃあ行ってくるよ兄さん……」
「…………」
「アルってば早く!」
フェリアは僕の腕にまとわりついて密着した。
「!」
だ、駄目だよ!!!
ただでさえ兄さんの視線が痛いのに……
扉が閉まる直前、兄さんのありえない程のどす黒い睨み付けが目に入った。
対象はもちろん僕。
……うぅっ……
僕が何したって言うんですか、神様。
「……ねぇフェリア」
「何?」
散歩がてらフェリアのご機嫌をとる僕。
僕って兄さん想いでしょ。
「……もう兄さんけしかけるのやめない?」
いつもはここで笑って「帰ろうか」って言ってくれる。
それで今回も仲直りで、一件落着。
―――のはずだったんだけど……
「アルはエドの味方をするんだね?!」
フェリアがくってかかってきた。
「ち、違うよ!確かに今日のは兄さんも悪いけど……喧嘩はよくないよ」
「……わかってるよ。でも……」
話の発端は数時間前。
「しょうがないっつってんだろ!」
部屋の外まで聞こえる兄さんの声。
「……だって……約束したじゃない……」
部屋に入ってみるとフェリアの今にも泣き出しそうな顔があった。
多分今日はデートの約束でもしてたんだろう。
それを兄さんがドタキャンする……これが原因で喧嘩したのは今日で5回目。
でも、いつもならフェリアの涙で兄さんは口調を和らげるはずなのに、今日ばかりは更に強くなった。
「……女はすぐく」
「泣いてない………」
「泣けば解決すると思ってんのか?」
「……思ってない」
「『行けない』って言っただろ?ならそこで納得しろ」
「……っ……」
フェリアは必死に涙を拭くけど、後から後から滝のように止まらない。
声を殺して泣いている背中がずっと震えていた。
「兄さ――――」
「わかったわ」
フェリアによって僕の怒りは遮られた。
この位置からはフェリアの顔がよく見えない。
「……だ、大丈夫、フェリア?」
「もういいわよ……エドのバカ!!」
バァン!!
フェリアは僕の横を通り過ぎ、泣きながら出て行ってしまった。
兄さんは溜息をつくと眉間に皺を寄せて本を開いた。
僕がフェリアを探しに行こうとドアノブに手をかけると、兄さんが『行くな』と睨む。
しょうがなく僕は兄さんの近くで集中できない本を読み始めた。
その後、何気なくフェリアは帰ってきた。
いつもの笑顔で照れくさそうに入ってきたから、もうフェリアの機嫌は直ったのかと少し安心した。
でも実際はそうではなかった―――
「……エドは私の事なんかどうだっていいのよ」
「それは違うよ!」
これだけはわかってたから必死に弁解した。
弟の僕さえも睨み付ける程、兄さんはわかりやすい……と、思う。
「はっきり断言できる?」
「う……」
ふんっ!とフェリアはそっぽを向いた。
「エドがそういう風なら、私にも考えがあるんだから」
「な、何を……?」
「ふふ……教えな~い」
そう言うとまた僕の腕にまとわりついてきた。
意地悪なフェリアの目が僕を見上げていた。
そう……わざとやってるんだ……
……で、僕が被害者になるんだね(号泣)
「あら?アルフォンス君にフェリアちゃんじゃない」
後ろから呼び止められて2人は振り返った。
「ホークアイ中尉!」
「奇遇ね。あら……?エドワード君はいないの?」
「兄さんは宿で調べ物をしてると思います」
「あ、あの!ホークアイ中尉!」
フェリアは僕から離れて中尉の手を取った。
「どうしたの、フェリアちゃん?」
「……お願いがあるんです!」
フェリアは言い表せない程の笑顔だった。
な、何か嫌な予感がする……
ガチャ……
「……フェリアは?」
開口一番がその台詞。
心配なら喧嘩しなきゃいいのに。
「あ~ええと……」
「なんだよ、はっきり言えよ。楽しく散歩してきた弟クン?」
うわ。イキナリ攻撃ですか、兄さん。
僕だって兄さんには怒ってるんだからね。
「別に……僕はフェリアが行きたいって言うから付いてっただけだよ?」
「そーかそーか。……ならその跡はどう言い訳するつもりだ?」
「え……?……あ゛!!」
アルは自分の腕に付いているリップグロスの跡にやっと気が付いた。
出せれない冷や汗を流して自分の兄に目をやると、完璧に青筋が浮かんでいた。
「あ……あは、は……」
どーりで今日のフェリアの唇は血色がいいと思った。
さすがだよ、フェリア……
「で、フェリアはどうしたんだよ」
ううっ……もうどうにでもなれ!
「その……フェリアは、東方司令部に行った」
「あぁ?!何でだよ!」
さらに兄さんの眉間に皺が寄った。
「み、道でホークアイ中尉にばったり会って……マスタング大佐が会いたがってたからって……半ば強引に連れてかれた」
「!!……何やってんだよ、あのバカ」
ガタッとエドは椅子から立ち上がった。
「で?お前は付いていかなかったのか?!」
そんなに睨まなくても……
確かに僕より大佐の方が危険度高いけどさ。
僕には僕の役目があるんだから。
「僕は、この事を兄さんに伝えないといけないから」
「……っ……くそ!」
悪態を付きながらもエドは赤いコートに袖を通した。
これぐらいで慌てて出て行くぐらいなら、最初からフェリアとデートしてればよかったのに。
……これでいいのかな、フェリア?
「嬉しいね、君から会いに来てくれるとは」
司令室にはにこやかな軍人、ロイマスタングがいた。
「……えぇ、ちょっと大佐に会いたくなって」
適当に話を合わせる。
「最近、鋼のとはどうだね?」
「え………?」
「よければいつでも私が相手するよ?」
歯が光りそうなスマイルでそう言った。
動揺を隠して私は笑った。
「結構です」
「つれないな……私は本気なのに」
フェリアは溜息を聞きながらも、出されたコーヒーに口を付けた。
無糖ってこんなに苦いんだ……そんな事を思いながら時計の針を確かめた。
そろそろかな……
「大佐、たまには肩でも揉みましょうか?」
そう言うとソファーから立ち上がり、大佐の背中に回る。
「珍しいね、君がそんな事を言ってくれるとは」
「ほんとに気が向いただけですからね」
大佐はホロリと泣き出しそうになりながらフェリアに背中を預けた。
とりあえず揉んでみる。
「う~ん……中々だね」
「そうですか?」
あまり大佐の話など聞いていない。
「お、そこをもうちょっと強く」
「はいはい」
要求が多いんだから。
そう思いつつもフェリアは外の音に耳を傾けた。
……どたどたどたどた!!
来た!!
「あ、こっちの方もこってますね~」
フェリアは更に大佐に密着して肩を揉んだ。
はたから見れば後ろから抱き付いている風に見えるだろう。
「ふふふ……フェリア、本気で私のものにならないか?」
「何言ってるんですか」
意地悪な目が私を振り返った。
「私は計算高い女も好きだよ」
冷や汗が出そうになった。
「な、何の事……」
目を泳がせていると、知らない間にフェリアの腕が掴まれた。
「それが私の為だったらもっと嬉しかったのに」
バァン!!!
「フェリア!!」
エドは部屋に入るなり茫然とした。
部屋ではフェリアが大佐に抱き付いて肩なんか揉んでいる。
しかも大佐の手がフェリアをがっしりと離さない。
鋭い眼差しを大佐に向け、エドはフェリアの傍まで駆け寄った。
「ほら行くぞ!!」
「あ、ちょっ……!」
エドに掴まれた手首がもの凄く痛かった。
けたたましいドアの音がして、後に残されたのは寂しい大佐1人。
「結局、私は利用されただけか……羨ましいな鋼の」
メソメソ泣いて、大事な書類にシミを幾つもつけた。
後で中尉にどんな目に合わせられるか……それは書かないでおく。(笑)
「ん……っんん……!」
司令室を出た後、会話は一言もないまま宿に戻った。
そしていきなりベットに押し倒された。
「っはぁ……や、止めてってば!」
必死にエドを引き剥がした。
「他の奴のとこに行った罰だ」
「わ、私が誰と何しようが勝手じゃない!…ん……っふ……!」
エドは唇でフェリアを押さえつける。
「大佐に見つめられて嬉しかったか?」
「う……れしく、ない……!」
「アルに構ってもらえて楽しかったか?」
「た……のしかったわよ!んんっ……っ……!」
エドの舌がさらに奥まで入ってきた。
「じゃあ俺は?構って欲しいか?」
「構って……ほしくないっ!」
「でもお前、さっきより舌絡めてくるぞ?体は正直だな」
カァと顔が赤く染まるのが自分でもわかった。
それを見てエドは嬉しそうに笑う。
「お前は俺のもんだ。俺以外の奴に触れるな」
「な、何よ!都合のいい時だけそんな事言って……!」
「……こんな台詞、いつも言えるかよ!」
自分で言っておきながら微かに頬を染めたエド。
その顔に一瞬気を許してしまいそうになったけど、何とか怒りを引き出した。
「……私の事どうだっていいんでしょ」
「あぁ?!何でそうなるんだよ!」
「だって!全然……相手にしてくれないんだもん。今日だって……」
「今日は仕方がないって言ったろ?」
「じゃああんな言い方しなくたっていいじゃない!」
「フェリアがあんな事ぐらいで泣くからだろ?!」
「あんな事?!エドにとってはあんな事なんだね?!」
エドがフェリアの上に跨った状態で口論は続く。
「あ~もう!わかったから!俺が悪かったって!これでいいだろ!」
「それ全然自分が悪かったって思う謝り方じゃないよ!」
「謝ってんだからいいだろ!」
「もういいってば!は、離してよ!」
フェリアが下でジタバタ暴れるが、エドの力はそんなに弱くない。
キッと最大の抵抗で睨むと、エドはその怒った顔付きとは反対に優しいキスをした。
柔らかい唇に全身の力が抜けた。
「……悪かったって」
「…………」
「今日は、その……新しい錬成の本を見つけたから、つい熱中して……」
「……わかってるわよ、そんな事ぐらい。エドが何を一番大事にしてるのか……」
「……わかってねぇよ」
「え?」
「元の体に戻る事も大事だけど……俺が一番大事なのは……」
エドはフェリアの胸に顔を埋めた。
「フェリア……だから。……それに……」
「……それに?」
エドがモゴモゴ言い出した。
髪の隙間から見える耳が真っ赤だった。
「……俺はフェリアが傍にいるだけでいいから……」
あぁ……何でこの人はこんなに不器用なんだろう……
「……バカ。そうならそうと早く言えばいいのに」
「だから、んな台詞簡単に言えるかよ」
フェリアは満面の笑みでエドに抱き付いた。
さっきまで強気だったエドが今度はオロオロしている。
「バカ」
「……うるせぇ」
「豆」
「んだと?!」
エドはもう一度唇を重ねた。
優しく、壊れ物に触れるように舌を絡ませる。
二人とも、だんだん体の熱が上がっていくのがわかった。
「……傍にいるだけでよかったんじゃないの?」
「う、うるせぇ!男にはいろいろと事情があんだよ!」
「何よそれ!具体的に言ってみてよ」
「……歯止めなんか、きかないんだよ……!」
「エドっ……ん……んん~……!」
そのままエドは手を進めた。
フェリアは途中までは反抗したが、じきに体をエドに任せた。
熱に浮かされてる間、ずっとエドのしかめた金目と光る金髪を眺めていた。
いつもは子供みたいなのに、こういう時だけ『男』になるエド。
すこし……ずるいなと思った。
「なぁ……」
「……何?」
もそっとエドの方に向き直る。
「もう俺に当て付けるような事はするな」
フェリアは目を見開いた。
「……知ってたの?」
「当たり前だバカ。いつもはアルだけだったから何も言わなかったけど、今日はわざわざ大佐のとこまで行きやがって……」
恥ずかしい思いに駆られて、エドがまともに見れなくなった。
「……だって……」
「んな事しなくたって俺はお前が……」
「……何よ~?」
またいつも言わない事を言おうとしてる。
嬉しくなって言葉の続きを待った。
「……ちゃんと……好き、だから……」
真っ赤な顔、だけど真剣な目で言ってくれた。
それに答えるように、フェリアはエドのまだ何も纏ってない胸に抱き付いた。
「私も……好きだよ、エド……」
と、幸せな顔だった。
……が、ある事に気が付いてガバッと起きあがった。
「だから……あの時意地悪したんだ!」
「あ?」
「強引にキスしたじゃない!恥ずかしい台詞まで言っちゃって!」
「あ~それは……フェリアが俺に嫉妬させようとしてたからそれに乗っただけだけど?」
「にしては随分な鬼畜っぷりだったじゃないの!」
「鬼畜ってフェリア……。ま、半分はフェリアが悪いんだし……?」
フェリアはふるふる拳を握りしめた。
「エ……エドのバカーーーーー!!!」
「結局、僕だけ酷い目にあうの~?!」
隣の部屋でただ時が過ぎるのをじっと待っているアル。
「今度絶っっ対!仕返ししてやる!!」
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ぐあ~~~~~なんだこりゃ!!
ただのバカップルになっても~たぁ~!!(汗)
甘々が書けない事に今気が付いた私……
今度こそ絶対甘々を書く!!!
しかもアル&大佐放置プレイ(笑)
最初はアルサイドだったのにね……(主役は兄なんですよ)
男が使う「バカ」に萌えます(死)
微エロは疲れますね。