――2015年、父が死んだ。

尊敬できるメカニックで私の目標だった、たった一人の肉親。
友人である風見さんと同じく、父はアスラーダを守り、殺された。


アスラーダプロジェクトについては知っていた。
数年前に父に連れられて計画を打ち立てた本人、風見広之さんに会ってその話を聞いた。
彼は私にメカニックの才能があると推してくれたし、いつかはプロジェクトに参加しないかと誘ってもくれた。

だけどその時、私の腕ではまだ未熟だと自覚していたから、一度は親元を離れてメカニックの修行がしたいと考えた。
色々な所で武者修行して、十分な知識と技術を得たら帰ってこようと。

そして、いずれは父や風見さん達をサポートできる位置に行きたいと思っていたのに。

まさかこんな形で対面するとは、あの時は思いもしなかった。
帰ってきた時、憧れだった父は既に風見さんと共に眠っていた。


「ハヤト……」

風見さんの1人息子、彼は自分よりも5歳も年下の少年だったけど、
私が知らせを受けて帰国した時には既にサイバーフォーミュラに出場していた。
形見となってしまったアスラーダに乗り、風見さんと父の意思を継ぐように。

「ごめんなさい、琉奈さん……っ」

親同士が友達という事で、ハヤトの事を弟のように感じてよく一緒に遊んだ。
まだ本当に小さかったハヤトにバイクを教えてしまったのはおそらく自分だ。
だけど最後に見た子供の面影はなく、ハヤトは父を亡くした私に謝るほど強くなっていた。

「ハヤトのせいじゃない。いいんだよ、たぶん父さんはアスラーダを守る事が幸せだったんだろうから」
「ごめん、なさい……っ!」


ハヤトをあやすフリをして、私は震える少年を抱きしめて泣いた。


私は天涯孤独の身になってしまった。
心配したハヤトがスゴウのチームに誘ってくれたけど、それは快く承諾できそうになかった。
アスラーダを取り巻く問題は既に解決していたし、彼の周りにはもう仲間がいるようだったから。
絆で結ばれた人達の間に割り込むのには少し気が引けた。

「またいつか、ハヤトがもっとアスラーダを成長させたいと思うようになったら戻ってくるから。
その時には先頭切って参加できるように、また修行に出るね」

まだ父のようにはなれていない、だからアスラーダを整備する勇気がなかった。
もう数年経験を積んで自信をつけたら、今度こそ夢の為にハヤトのもとに戻ろうと決心した。




――そんな時だ、彼らが私の前に現れたのは。




琉奈さんだね?とても綺麗になっていたから、一瞬見間違えそうになったよ」

低い声で微笑んだのは、兄弟のうち兄のほう。

「………名雲、さん?」
「覚えててくれたんだね」


そう、忘れるはずがない。

父に連れられて会った風見さんと一緒に、彼もいたから。
お兄さんは気さくに私に話し掛けてくれて、将来メカニックになりたいと言ったら彼はとても応援してくれた。


「君を探していたんだ」


だけどあの時私は、よく笑う兄が連れてきたという弟に目が釘付けになっていた。
兄に似て長身、そして何かを秘めているかのような影のある目。

確かに一目惚れをしたあの人だったから、忘れるはずがない。


「君のお父さんが守っていたアスラーダを継ぐマシンを作らないか?」



その言葉に惹かれてしまった時から、私は抜け出せない何かに、囚われた。






前章
光に照らされた罪――











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ついに始める事となりました、サイバー夢、しかも名雲夢。
古くてマイナーすぎて、完全に自己満足で始めてしまいました。

夢小説を書くようになってからしばらくが経ちましたが、
好きだったサイバーで夢を書きたいとずっと思っていて、水面下で少しずつ書き続けてきました。

SINが終わってから10年が経ちましたが、変わらずこの作品が好きです。
サイバーは確実に私の人格形成に影響を及ぼしたと自信を持って言えるほど、自分の根底に存在し続けています。

全シリーズ好きだけど、SAGAで本気でハヤトに惚れたから、たぶんSAGAが一番好きです。
色々言われてるけど、やっぱり思い入れが一番あるし名雲さんで私の性癖に気付かされたし(笑)
なので、話はSAGA~SINがメインになります。本当はもっとZEROも書きたいんですけどね。

十数年越しです。
ハヤトでもなく加賀でもなく名雲夢なのは私の趣味ですが(笑)、
夢を書く事によって私の中で何かを終わらせる事ができるならと思って始めました。
まぁ、公開したのは自己満足ですけどね。


願わくばこの夢が誰かに読まれ、賛同してくれたらいいな、と思います。
妃瑪―2008.12.10