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元々、沖矢とはそれほど親密なわけではなかった。

料理を届けたりして会う機会が増えたが、それがなければ接点はないに等しい。
メールも、料理が美味しかったなどの報告ばかりで、せいぜい返す時に調理についてのアドバイスをする程度で長々と続いたりはしない。
世話になった人なので連絡が来たら失礼のないようにきちんと返すが、美弥から何かを発信する事はない。
彼自身も、意味もなく頻繁にメールを寄越すような人でもなかった。

だから、つまりは美弥がわざわざ出向かなければ関係は一気に薄いものになる。
そうしなければならないのだと、意識するようにして日々を過ごした。

そんな今までの味気ない生活に戻して、美弥は気付いた。
いつの間にか、自分は色んな人達に囲まれていたのだという事を。
沖矢に、子供達に、蘭や園子といった女子高生達、それから安室や小五郎という探偵と呼ばれる人まで。
彼らはみんな、シュウを失ってから出会った人達だ。
初対面だった時から美弥に優しくしてくれて、すぐに仲間に引き入れてくれた。
きっとそれが嬉しくて、何だかんだ上向きの気分で生きていたような気がする。

別に子供達とは遊んでいいと思うけど、知らないうちに誰かに依存してしまうかもしれないのが怖い。
実際、安室に指摘されるまで気付かなかったのだから。
そして子供達と関わると、必然的に隣の家に住んでいる彼とも接点ができてしまいそうで、少し足踏みしてしまっている。

だから、今の美弥には何もない。
仕事と家と意味のない休日と、あとは職場で会う人ぐらいで構成された世界では、もうつまらないと感じている自分がいる。
誰かと会えないのは少し寂しいなとも、きっと思っている。

わかっているけれど、美弥が動けばまた何かが壊れるかもしれないから。
そう考えているうちに、無駄な季節だけが目の前を通り過ぎていった。


暑かった時期もあっという間に終わり、寒さが本格的に身に染みるようになってきた頃。
携帯に届いた一通のメールが美弥の気持ちを動かした。

『博士の家でクリスマス会をやるから美弥さんも参加しない?みんなが来てほしいってうるさいんだ』

コナンからの連絡に、美弥は思わず笑みを漏らした。

(こんな何もない私を誘ってくれるなんて)

美弥を混ぜてくれようとする子供達の無邪気さが素直に嬉しかった。
自分がどう考えていようとも、会うのが怖いと思っていても、そんな事は純粋な彼らには関係ないのだろう。
美弥の危惧を優先して断ってしまう方が彼らを悲しませてしまうのではないかと、そう感じる。
いや、結局それは建前で、本当は美弥自身が応えてあげたいと心から思ったのだ。
だから、「ありがとう」と添えて返事を送れば、温かい気持ちが胸に広がった。

窓の外を見遣れば、外の世界は既にクリスマスの気配。
そこかしこが過剰なほどにライトアップされ、赤や緑の装飾がちりばめられている。
恋人達が胸躍らせる日に、美弥は一人きりじゃない事を心から嬉しく思った。
きっとその日は、誰もいない家にいたらおかしくなっていたかもしれないから。

毎年ユキに作っていたクリスマス特製のメニューを、今度は子供達の為に腕によりをかけて作った。
ケーキは阿笠が横浜にある名店から取り寄せるらしいので、美弥は食事担当だ。

いつものようにトートバッグにつめて、慣れた道筋で阿笠の家に行く。
ふと、阿笠の家の隣にある工藤邸の表札に足を止めて、門扉の向こうにある玄関をチラリと覗く。

(メールも、しばらくしてないな……)

元々世間話のような会話もしないから、連絡がなければ必然的に会話は途絶えたまま。
だから今日という日に彼が何をしているかなど知らない。
だけどそれでいいのだろうと、美弥は振り払うようにして阿笠の家にお邪魔した。

子供達はパーティーが待ちきれなかったようで、近所の公園にサッカーをしに行っているらしい。
外に出て行くまでの子供達のやり取りが容易に想像できて、美弥はクスリと笑いながらキッチンに立つ。
追加のドーナツを揚げている阿笠の隣で、持ってきた料理の仕上げに取りかかった。

「おお、いっぱい作ってきてくれたんじゃな!」
「みんな、たくさん食べてくれますから」
「すまんのぉ」

大きめの皿を借りて、ちぎったレタスを敷き、その上に綺麗に盛り付けしていると、阿笠の携帯に電話がかかってきた。

「はい、阿笠ですが?――ああ、すまん。今ちょっと手が離せなくて、少し待っててくれ」

揚げ物の途中だったのでドーナツを油から出し、箸を置いてもう一度電話を耳に当てているが。

「うん?切れておる」
「どうかしたんですか?」
「ああ、コナン君からだったんだが、切れてしまったわい」

彼らは今サッカーをやっているはずだが、どうしたというのだろう。

「何だったんですか?」
「わからんのじゃ。何かメモをしてくれって言っておったが……まあ、必要ならまたかかってくるじゃろう」
「メモ……?」

帰って来てからとかではなく、わざわざ電話してきて急ぎでメモして欲しい事とは何だろう。

(何か買い足すものがある、とか?)

いや、そんなはずはないと、探偵のような推理力のない美弥には見当もつかなくて首を傾げる。
阿笠は特に気にせず揚げ物の続きをしているが、相手はあの頭の切れる少年だ。
意味もなく電話してきたりはしなさそうだけど。

「かけ直してみたらどうですか?」
「お?おお……美弥君がそう言うなら」

コンロの火を切り、阿笠が電話をかけてみるが。

「電源が入ってなさそうじゃ。しかもこれ、光彦君の番号じゃ」
「…………」

ますますよくわからない。
さっきまで繋がっていたのに電源が入っていないという事は、電池が切れてしまったのだろうか。
そして光彦の携帯を借りてまで伝えたかった事とはなんなのか。

「私、少し公園まで行ってきますよ」
「別に美弥君が行かなくとも……」
「いいんです、様子を見に行くだけですから」

キッチンを阿笠に任せると美弥はエプロンを脱いだ。
盛り付けは戻ってきてからでもすぐ終わるし、直接聞いて何もなければそれでいい。
加えて、子供達が楽しく遊んでいる所を見てみたいという気持ちも多少はあった。
彼らが向かった公園の場所を阿笠から聞くと、美弥は歩いて出掛けた。

だけど、目的の公園に行っても子供達の姿は見つけられなかった。
代わりにサッカーボールだけがポツンとその場に置かれている。

(みんな、いない?)

違う所に移動してしまったのだろうか。
だけど、そうであるならボールも一緒に持って行きそうなものなのに、と思う。
唯一知っている連絡先のコナンの携帯は阿笠の家で充電中のままだったので、そうなると誰にも連絡が付かない事になる。
入れ違いになったかもしれないと阿笠に電話をして、子供達が帰ってきてないか確認してみたが、答えは否の言葉だった。

(何処に行ったの?)

ただ遊んでいるだけで、その延長で何かメモして欲しい事があっただけならいいが。
例えば事件や事故があったり、何か危険な目に遭っていたとしたら、そう思うと一気に不安になる。
きっと気にしすぎなのだろう。阿笠の言う通りなのかもしれない。
どこか違う場所で楽しく遊んでいる、そうであって欲しいと願う。

だけど美弥は現実に、身近な人が帰ってこなかった経験が二度もある。
だから余計に恐怖心がじわじわと湧き上がる。

「……っ」

キョロキョロと視線を彷徨わせて、周囲を探して次第に走り出す。
米花町はあまり詳しくないので別の公園の場所がわからない。
闇雲に探してみるが知っている子の一人も見つけられなくて、美弥は息を切らせる。

(おかしい……)

他に遊ぶ場所があると言っても、子供の足でそんな遠くまで行くだろうか。
いずれは阿笠の家に戻るのだから、そもそも無闇に離れたりしないはずなのに。
だけど見つからなくて、嫌な想像しかできなくなって、心臓がドクドクと音を立てる。

(誰か、土地勘がある人……!)

美弥だけで探しても埒が明かない。
誰かに聞いてみようと携帯を取り出して、美弥はハッと我に返る。
咄嗟に操作した画面の名前が沖矢になっている自分に驚いた。

彼なら詳しそうな気がするし、事情を話せば車でも出して一緒に探してくれるだろう。
だけど、自分はまた彼と関わるのかと、心の奥の何かがそれ以上指を動かそうとしない。
そんな事を考えている場合ではない事はわかっているのに。

「…………」

美弥はもう一つの可能性を思い付いて、走り出した。
もう少し先まで進めば、一度行った事のある喫茶ポアロがあるはずだ。
もしかしたら、探偵の彼がいるかもしれない。

「あれ、いらっしゃいま――美弥さん、何かあったんですか?」

息を切らせて少し乱暴に店内に入った美弥に、安室は笑顔で出迎えたもののすぐに何かを察知したのか声を一段低くさせた。

「あ、の……子供達が、いないんです」
「子供達、とはコナン君達の事です?」
「はい……っ、サッカーをしに行ったはずなんですけど、公園にいなくて、電話も通じなくて、
あの、勘違いかもしれないんですけど、他に公園ってどこにあります……っ?」
美弥さん、落ち着いてください」

他に客がいる事に躊躇いを覚えながらも必死さを隠せず、助けを求める目をする美弥の肩を安室は静かに支える。
そして素早く喫茶店のエプロンを脱ぐと、店内にいる梓に声をかけた。

「梓さん、マスターには僕は早退したと伝えてください。バイト代もいりませんので。もし何か変わった事があれば、すぐ僕に連絡してください」
「えっ、あ、はい……っ」
美弥さん、行きましょう。僕の車で探した方が早い」
「、すみません……仕事中なのに」
「いえ、僕も子供達が心配ですから」

安室にそっと促されてポアロを出ると、近くの駐車場に停めてあった彼の車に乗せられる。
今となっては聞き馴染みのあるエンジン始動音に、美弥は少しだけ安心感を覚えた。

「どこかで遊んでるならいいんです……けど、何か嫌な予感がして……」
「ええ、大丈夫です。まずは周囲を探しながらいくつかの公園を見て回りましょう」

スピードを落としてゆっくりと車を走らせる安室の傍らで、美弥は細い路地も逃すまいと一つ一つ目を凝らした。
彼が把握している数か所の公園や広場も覗いてみたが、それでも子供達の姿はどこにも見当たらない。

やっぱりいない、と泣きそうな気分で外を見渡していると、安室が持っている携帯が鳴った。
良い知らせか、それとも悪い知らせか。
険しい表情で見つめる先で、安室は車を路肩に寄せてから通話ボタンを押した。

「梓さん、どうかしましたか?……レシート?」

子供達に関する情報ではなさそうで、美弥は密かに肩を落としてしまったが顔には出さないようにした。
電話が終わると、安室はどうしてか運転席側の窓ガラスをすっと下ろしていく。

「ポアロによく来る猫の首輪に、字が消されたレシートが挟まっていたそうです」
「レシート……?」
「そして、その紙は冷えていたそうですが、風で飛ばされてしまったようで」
「……?」
「少し待ってください」

その話が今回の件と何の関係があるのかわからない美弥は首を傾げるばかり。
それを横目にしつつ、安室は開いた窓から右手の掌を出しながら左手でスマホを操作する。

「この時間の風向きや風力などを計算に入れれば、飛ばされた場所がわかるかもしれません」

(そんな事できるの?)

よくはわからないが、それを探す事に何か意味があるのかもしれない。
スマホを見つめてじっと考え込んでいる安室を、美弥は呆けたように見つめた。
その横顔はいつもの温和な雰囲気とは違い、頼もしく感じられるほどに真剣な表情だった。

「こっちの方角ですね」

アクセルを踏んでいくつかの路地を通り過ぎると、彼はまた車を停めて運転席から降りた。
それに倣って美弥も外に出て、レシートを探す為に辺りの地面を見回してみる。
が、結局見つけたのは安室だった。

「やはり、此処にありました」
「本当だ……」

電柱の根元で、風に煽られた葉っぱと一緒にレシートが揺れていた。
こんな小さな紙を探し当てるだけで凄いなと思っていたが、安室はさらにレシートに残った文字を読んでいる。
しゃがみ込む金髪の中央にあるつむじを見下ろしていると、すぐに彼は立ち上がって車へと戻っていく。

「宅配便の冷蔵車です」
「え?」

どういう事なのか聞いていいかわからなかったが、きちんと安室は教えてくれた。

「子供達はそこに閉じ込められた状態で乗せられているのでしょう。冷蔵車だとわかればあとは簡単です」
「…………」

ああ、この人は本当に探偵なんだなと思った。
どうしてそんな事がわかるのだろうと、目を丸くさせながら見つめていると安室が口角を上げる。

「あのレシートは暗号です。犯人に見つからないようにメッセージを残し、猫に託したんでしょう。さすがコナン君ですね」
「コナン君が……」

暗号を解読した安室も凄いが、それを作ったコナンがあまりにも小学生離れしていて美弥は呆然とする。

(本当に、敵わない人ばかり)

頼りになる人達ばかりいる一方で、自分の無力感で居た堪れない。
美弥はただ走り回っていただけで何もできていない。
恐らく美弥が子供達を探さなくても、コナンはしっかりと暗号をポアロに届けて、それを解読した安室が動いてくれたのだろう。

美弥さんのおかげですよ」
「え?」
「貴女が僕を頼ってくれたから、コナン君達の居場所がわかったんですよ」
「…………」

(きっと、そんな事ない)

お世辞か、気遣いかわからない。
だけどそれを鵜呑みにできるほど美弥は能天気ではなかった。

何だか泣きそうになる気分をこらえて外を見つめる先で、車はさっきよりも機敏な動きで町内をぐるりと一周する。
そして、美弥の出発地点だった阿笠の家の前で停まっている宅配業者の冷蔵車を見つけた。

「あ……!」
「あれですね。美弥さんは動かないで」

助手席で慌てる美弥を余所に、車から降りた安室が冷蔵車の配達員に近付いていく。
僅かに開いた荷台の奥に子供達の姿が確かに見えて、それだけで美弥は凍り付くような恐怖を覚えた。
間違って閉じ込められてしまったのではない、明らかに配達員二人が子供達を隠して扉を閉じようとしているのだ。

(どうするの、安室さん!?)

車内にいるので会話までは聞こえないが、涼しい顔の安室が何かやり取りした後、気付けば配達員がその場で気絶していた。
安室の背で何となく隠れていたが、彼が目にも止まらぬ速さで配達員の腹に拳を打ち込んだように見えた。
それを目の当たりにしたもう一人の配達員は、安室の強さに驚いたのか抵抗する気力もない様子でへたり込む。

あっという間の出来事でポカンとしてしまったが、嬉しそうに荷台から出てくる子供達に美弥は堪らず車から飛び出していた。

「っ、みんな!!」
美弥さん!?」

駆け寄った先で美弥から一番近くにいた子供、コナンにぶつかる勢いで抱き締めた。

「よかった……!みんな、無事でよかった……っ!」
「……美弥さん……」

みっともなくボロボロと泣きはじめた美弥に、ずっと年下なはずのコナンが苦笑する。
美弥はそのまま子供達を次々とその腕におさめては「よかった」と安堵を噛みしめる。
かわるがわる抱き寄せられた皆は照れ笑いを浮かべ、哀は若干渋い顔をしていたが、それでも腕から逃げる事はなかった。

美弥のねーちゃんがどうして安室のにーちゃんと一緒にいるんだ?」
美弥さんに頼まれたんですよ。子供達がいないから探してくれって」

答えたのは、配達員達をガムテープでぐるぐる巻きにしている安室だった。

「そうなんですか?レシートの暗号を解いてきてくれたんじゃないんですか?」
「レシート?ああ……猫の首輪についていた妙なレシートなら風に飛ばされてしまって、見つけられなかったよ」
「えっ?」

子供達が驚くなか、美弥も目を見開かせた。
レシートの暗号を解いて此処まで来たのに、どうしてそれを隠すのだろうと。
疑問に思って安室に視線を向けると、彼は"黙っていて"という目をして佇んでいた。

「此処に来たのは、美弥さんのおかげだよ」
「そうなのかー!ありがとう美弥のねーちゃん!」
「う、うん」

どういう訳か、レシートの件は言いたくないらしい。
そのせいで全て美弥の手柄になってしまって、子供達の感謝の言葉を素直に受け止められない。
安室は苦笑するように目を細めると、困惑する美弥に近付いて目尻の涙を拭う。

「よかったですね、美弥さん。もう安心してください」
「……ありがとう、安室さん」
「いえ、お役に立てて嬉しかったです」

くすぐったいぐらいの仕草にも、今日ばかりは彼の優しさに感謝した。
そして彼は仕事があるからと、すぐに去って行ってしまった。
何度も頭を下げれば、「今度またポアロに来てくださいね」なんて爽やかに言うので美弥は小さく頷いた。


どうやら冷蔵車には死体が入っていたらしい。
間違って荷台に閉じ込められてしまった子供達がそれを見つけて配達員達が犯人だと知り、
子供が乗ってると気取られないようにしながら外から配達員達を捕まえてくれるように画策していたそうだ。
美弥はそれを聞いてぞっとしたが、何とかその箱を目の当たりにする事もなく犯人と一緒に警察に引き渡せた。

なんだかバタバタしてしまったが、落ち着いた所でようやくクリスマス会となった。
本来ならそんな事をしている気分ではなさそうだが、慣れてしまっているのか子供達は気にせずパーティーを望んだ。

自分達と同じ冷蔵車で配達された限定ケーキの箱を開けて、一同は悲鳴を上げた。

「ええー!なんだこれ!?」
「せっかくの限定ケーキが台無しじゃわい!」

箱の中身はぐちゃぐちゃで、とても食べられたものではない無惨な状態だった。
事件の犯人だった配達員がわざと落としたりしていたそうなので、これも例に漏れずその被害に遭ってしまったらしい。

「ええ~……せっかく配達されるのを待って、閉じ込められまでしたのに、ケーキが食べられないなんて……」
「これなら美弥お姉ちゃんが作ってくれた方が良かった……」
「あんまりじゃ……」

不満続出の子供達と、しょんぼりしている購入者の阿笠。
残念な空気に美弥は少し考えて、立ち上がる。

「じゃあ、これから作ってみるから、みんな他のご飯食べて待ってて」
「え?美弥さん作るの?」
「急だし、材料も揃ってないかもしれないから簡単にできるものになるけど、ないよりいいかなって」
「やったー!」

一転して飛び上がって喜ぶ子供達。
そういえば、と美弥は思い出してバッグから五つの小さな包みを取り出した。

「これ……クリスマス会だから、私からみんなへちょっとしたプレゼントなんだけど、よければ食べてね」
「えー!何これ、可愛い!」
「僕にそっくりな顔です!」

透明なラッピング袋に拳ぐらいの大きさのクッキーが一枚だけ入れられて、リボンで結ばれたそれ。
人の顔の輪郭に型取られたクッキーの表面にアイシングを乗せて、その上に色付けしたものを使って子供達に似せた顔を描いた。
絵がすごく得意な訳ではないので売り物のようにはいかないが、それぞれの特徴は可愛く出せたのではないかと思う。

「髪の毛まで……すごいわね」
「すげぇな美弥さん、眼鏡まで……」
「これ食えるのか!?」
「うん、ちゃんと全部食べれるよ」

しげしげと自身の顔をしたクッキーを眺める哀とコナンを余所に、元太らしい質問に美弥は笑う。
アイシング部分は卵白と粉糖で作られているから問題なく食べられる。

「食べるのもったいなーい!」
「本当ですね!できるなら残しておきたいです!」

そんな風に言う歩美と光彦、みな思い思いに喜んでくれているようで。
プレゼントした甲斐があったかな、と満たされたような気持ちに包まれる。

はしゃぐ子供達を残し、阿笠に残っている材料を訊ねる。
小麦粉と卵と牛乳、バター、それがあれば何かできる。
作れそうなレシピを考えながら、美弥はエプロンを付けてキッチンに立った。











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コナン世界の時空なので季節が目まぐるしく変わりますが、あまり深く考えない方向でよろしくお願いします。