初めて会った時…………俺は言葉をなくした。
friends12
「エドー!アルー!見て見て!」
ウィンリィが嬉しそうに俺達の所へ走ってきた。
顔を上げると、ウィンリィの後ろに一人の女の子がいた。
「フェリアちゃんだよー!ちょっと前にね、こっちにひっこしてきておともだちになったの!」
その時、俺は錬成陣を書いていたチョークを落とした。
躊躇いがちにヒョコっと顔を出した子は黒髪に黒い瞳で。
俺達の金髪とは違って絹のようにうねる漆黒。
その愛らしくて大きな瞳に俺は縛られた。
「エドもアルもなかよくしてね!」
「え、えと……フェリアです!な、なかよくして下さい……」
緊張しながら、でもほわっと笑ったフェリアに全身の血が熱くなるのを感じた。
何故だかわからない………だけど心臓の音が嫌にうるさい。
桜色に染めた頬に黒真珠の瞳、白い肌の彩色がとても綺麗で。
あの柔らかい笑顔がいつまでも頭に残った。
「よろしくフェリアちゃん!ぼくはアルフォンス、アルでいいよ」
「……うん!ありがとう!」
さっきまで不安そうな顔だったのに、もういっぱいに花を咲かせてる。
ウィンリィとは違う、すごく儚くて守ってあげないと、と子供ながらに感じさせる雰囲気だった。
「ほら、エドもなにか言って!」
「…………」
急に言われて、俺は本当に慌てた。
飛び出しそうになる胸の鼓動を押さえて目を合わせると、フェリアは恥ずかしそうにしながらも俺に笑いかけた。
そんな笑顔されて、俺はもうどうしていいかわからなかった。
「……よろしく」
目を反らして言ってしまった。
一瞬フェリアの顔が曇った気がしたけど、俺は何もできなかった。
どんな顔をすればいいかわからなかった。
笑うことさえ、できなかった。
それ以来……フェリアは俺の前で笑わなくなった。
わかっていた、俺が原因だってことは。
だけど俺はフェリアを見るたび、自分が自分でなくなるみたいに固まってしまうんだ。
俺だけ『エド君』と呼び、俺にはあまり話し掛けない。
それどころか俺がいるだけでフェリアの空気が張りつめるのがわかった。
あぁ……嫌われたんだなって思った。
「……その『君』っての……やめろよ」
フェリアが風邪を引いた時、いてもたってもいられなくなってそう言った。
フェリアは、俺がフェリアを嫌いだと思っていたらしい。
そんな事ある訳がないのに……
「ありがとう……エド!」
初めて俺を親しい者として呼んだ時、フェリアは笑顔だった。
真っ黒じゃなくて緑や紫が混ざったような不思議な瞳と髪。
熱にうかされた赤い唇と頬。
俺はずっとこの笑顔が見たかったんだ。
俺なりに頑張ってきたはず。
フェリアを見るといつも気が動転してしまうけど、何とか会話をしようとしてきたんだ。
フェリアも、少しだけど俺の前で笑うようになった。
だけど……それはもう手遅れだったんだ。
フェリアの傍にはいつもアルがいた。
アルがいるとフェリアは花が咲いたように笑った。
俺が苦労していたのにアルはいとも簡単にフェリアを笑わせてしまう。
何をやってもうまくいかない、何をやっても空回りする。
ずっとアルが羨ましかった。
フェリアはアルが好き、アルはフェリアが好き。
それが、俺の中でできた方程式だった。
「ねぇ、アルとフェリアの恋に協力してあげようよ!」
「…………え?」
「だってぇ~見え見えじゃない!」
ウィンリィが目をキラキラさせて俺に詰め寄る。
俺はどうしたらいい?
何でわざわざフェリアをアルとくっつけないといけないのか。
「……それは本人達に任せた方が……」
「でもね昨日言ったんだよ~~♪フェリアがね、アルの事が好きだって!」
危惧していた事が本当に起こってしまった。
目の前が真っ暗になって、心が締め付けられて痛い。
俺は……やっぱり手遅れだったんだ。
……違う、俺は何もできなかったんだ。
そうだ、俺は何もしていない。
フェリアがアルを好きになるのもおかしくなんかないし、好きになって当然だと思う。
フェリアはアルといるといつも楽しそうで、子供の頃の笑顔を今でもアルに向ける。
そうか、フェリアはアルが好きだったのか。
仕方ないさ、俺も半分諦めていたんだから。
………う言い聞かせても、痛みは治まらない所か痛みでどうにかなりそうだった。
初めに、笑顔でフェリアと目を合わせていたら何か変わっていたのだろうか。
アルを好きなら協力しようと思った。
アルは俺より断然人の気持ちがわかるし、何より心が優しい。
俺の出る幕じゃない。
俺は何もしなかったじゃないか。
俺の気持ちなんか……出したって迷惑になる。
フェリアが俺達と別れると言ったときも仕方ないと思った。
嫌だ、嫌に決まっている。
たとえフェリアが俺といて気まずくても、フェリアがいなくなるなんて考えられない。
後から引っ越してきたとはいえ、俺達4人はずっと一緒にいたんだ。
一度はフェリア達と別れた……だけどあの時はまだ、別離をこんなに後悔することはなかった。
あれは……そうだ、機械鎧を直す為にリゼンブールに帰った時だ。
俺とアルを出迎えた黒髪は随分長くなってて、不思議な色合いの黒い瞳は前にも増して綺麗だった。
息を飲んで、しばらく声を出せなかった事を覚えてる。
その時思った。
近づきたい、でも近づけない。
フェリアの笑顔はアルとウィンリィのものだけど、俺はそれでも……
ずっと……傍で見ていたいと。
そう、自分の想いに気がついてしまったんだ。
「……ずっと……ずぅっと……エドが、好きだったの……!」
熱にうかされながらウィンリィはそう言った。
「……え……お、俺……?」
「~~~!エド以外に誰がいるのよっ!」
「あ、そ、そうか……」
ウィンリィは女の子の顔だった。
膨れた顔を真っ赤にして上目遣いに俺を伺うウィンリィを……可愛いと思ってしまった。
「俺……ウィンリィはずっと仲のいい友達だと思ってたから……」
「……うん……」
知らなかった、ウィンリィが俺を好きだったって事……
でも俺はフェリアが……ずっと……
「き、急に彼女っては……考えられない……」
「…………うん」
自分の本心を伝えてるのに、何でこんなに胸が痛いんだろう。
何故こんなに罪悪感が襲うんだろう。
「……ごめんね?急に変な事言っちゃって……」
辛そうに笑った顔が余計に俺を締め付ける。
「あ……いや!その……ウィンリィは……好きだ。ウィンリィの言う好きとは違う、けど……」
「うん……わかってる。ごめんねエド―――」
「だから!この先……ウィンリィを好きになる事も……あるかもしれない、から……」
「え……?じゃあ……このままエドを好きでいていいの……?」
「……わかんねぇけど……諦めろとは、言えない……」
まるでウィンリィに期待を持たすような言い方……何であんな事を言ってしまったんだろう。
だけど……笑っているのに今にも泣き出してしまいそうな瞳。
このまま断ってしまえば、俺が泣かせるんだ、俺が傷つけるんだ。
ウィンリィの気持ちを踏みにじってしまう。
俺も、フェリアに打ち明けたらこうやって拒絶されて、俺の気持ちは行き場を失うのだろう。
想像するだけで目頭が痛くなってしまう。
……どうして『ごめん』と言えただろうか。
誰かの心を表してるかのような、酷いどしゃ降り。
「……っ……フェリアっ!!」
「な、エド……どうして……!?」
「はぁっ……はぁっ……フェリア……!」
「エド……びしょぬれじゃない……!」
「んな事は……どうだっていいんだよ……!」
ドアを開けたら、フェリアはベッドに座って考え事をしていたらしい。
どうにかして俺達と別れる方法を考えていたのか。
わかってる。
俺がフェリアを振り回している事も。
俺のせいでフェリアは自由になれない事も。
俺が苦手だという事も。
アルがフェリアを好きだという事も。
フェリアがアルを好きだという事も。
俺の気持ちなんか伝えたってフェリアは立ち止まってくれないという事も。
だけど……別れたくない、行ってほしくない。
傍で見ていたいんだ。
せめて……俺の想いは知ってほしかった。
俺はフェリアを嫌いじゃない。
俺はフェリアと一緒にいたい。
これだけは知っていてほしい。
俺は……ずっと……
「俺……俺……っ……!ずっとお前に言えなかった事があるんだ!!」
初めに、笑顔でフェリアと目を合わせていたら何か変わっていたのだろうか。
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やっと書けたエド視点。
あ~~……文才がない……(沈)