friends4






「つまりね、その理論は……」
「なるほど!だからこの錬成は……」

連日の宿は、この2人の勉強会が絶える事はなかった。


アルが錬金術を直接教えて以来、フェリアは錬金術の面白さがわかってきた。

今までわからなかった事も、すんなり頭に入っていく感覚。
アルも教えるのが楽しいのか、喋り通しだった。

時間を忘れて、アルとそんな会話ばかりしていた。



「…………」
「…………」

これは2人の傍観者。



「ここの本に載ってる式なんだけど……」
「あぁ、これは昨日やった錬成の変形だよ」
「え?昨日のやつでできるの~?」
「昨日あれだけ復習したでしょ?」
「あ、そうだったっけ?」
「そうだよー!」
「あははっ、ごめんごめん!じゃあこっちのは?」
「あ、これはまた違うよ。結構難しいんだけど……やる?」
「うん!やるやる!」
「オッケー。ならね……」

はしゃぐフェリアとアル。
楽しくて、外野の二人の事なんか完全に忘れていた。



「…………」
「…………」

部屋の隅っこで小さくなりながら眺めていた。

花が飛んできそうなこの桃色の雰囲気に圧倒されながら。






「……ねえ、エド」
「…………ん…」

ウィンリィはエドの耳に顔を近づけた。
肘を付いたまま、エドはあさっての方向をぼんやり見ていた。

フェリアとアルってすっごく雰囲気いいよね」
「……そうだな……」
「やっぱりフェリアって……アルの事が好きなのかな?」

エドの目が細められた。

「…………そう……なんじゃねぇの……?」

一度もウィンリィと目線を合わそうとしない。

「もう~真面目に聞いてよ!」
「聞いてるって……」
「アルは鎧だから表情わからないけどさ、見てよあのフェリアの顔」

ウィンリィはヒソヒソとエドを促した。
無理矢理に2人の方向に目を合わせられ、仕方なく視界に入れた。


フェリアの、昔と何も変わらない笑顔。
ふわっと笑うんだけど、瞳には輝きが灯っている。

その頬を薄く桜色に染め、目の前の弟を見つめる。
喜怒哀楽と表情をコロコロと変えては、一つ一つが静止画のように心に刻み込まれる。


「…………」
「ね、ね、ね?!あんな表情は恋をしてる顔だよ絶対!」

ウィンリィが隣ではしゃいだ。

「お似合いのカップル~~♪エドもそう思うでしょ……?!」
「…………そうかも……な……」

「……よし!」

ウィンリィがぐっと拳を握った。

「さっそく今夜にでも、フェリアの気持ちを確かめないとっ!!」
「確かめてどうすんだよ……」
「決まってるじゃないのそんな事!!」

荒い息をして意気込みウィンリィから、何がしたいのか読み取れる。


溜息をついて、俺は水を飲んだ。
だけど口に含んでも……うまく喉を通らなかった。











フェリアフェリアフェリア!」

ウィンリィはハイエナのように寄ってきた。
フェリアはと言うと、ベッドで横になりながら読書中であった。

夕飯も済ませ、お風呂も入って、夜の安らぎの一時。
女っていうのは、こういう時間に内緒話をするのが好きみたいで、ウィンリィも例外じゃない。

「な……何?」

ウィンリィはフェリアのベッドで飛び跳ねた。

「ねぇ、フェリアって好きな人いる?」
「え…………?!」

心臓が激しく鼓動した。

「あ、やっぱりそうだよね?!」
「それは……」


バレた……?!
なら何でウィンリィは嬉しそうにしてるんだろう……?


フェリアは動揺を隠しきれなかった。

「だってぇ~フェリアバレバレなんだもん~」
「…………」


やっぱり気まずい雰囲気がいけなかったのかな……?

どうしよう……
言ってもいいのかな……

この様子だと、ウィンリィは好きじゃないのかな……?


「こっちが見てて恥ずかしくなるくらいお似合いだもん!」
「……そう……かな……?」
「そうそう!エドもそうだって言ってたし!」
「…………え……?」
フェリアの顔見てれば誰が好きなのか、鈍いエドでさえ気が付いたんだから~」


え……?

待って、どういう事……?


「……エドも……?」
「そうだよ~最近なんかいっつもラブラブしちゃってさ~♪」


目の前が真っ暗になる。


そんな……

確かに隠してたけど、
確かにアルとはいつも一緒にいて、一緒に勉強してたけど、

エドは……私が好きなのはアルだと思ってたんだ……


「……エドは……何て言ってたの……?」
「ん~?『邪魔しちゃ悪い』って言ってたような……」


好きな人に勘違いされるのが、一番辛いよ。
いくら好きだと悟られないようにしてても……それは……

あんまりだよ、エド……


「で、で、で?!どうなのよ、ホントの所はさぁ~!」
「…………」


2人でまた内緒の話をしてたんだ。


フェリアってば~!」


私は蚊帳の外にいるんだ。


「……じゃあ、ウィンリィが先に好きな人言ったら言う」
「ええ……?!」

明らかにウィンリィの顔が赤くなった。


……やっぱり聞きたくない。


「え~……本当に言わなきゃダメ?」
「うん、ダメ」


本当は聞きたくない。

それを聞いたら私の想いは閉ざされる。


「う~ん……しょうがないなぁ……フェリアになら言ってもいいかな……?ずっと一緒にいるんだし……」


やめて。

もういいから。もう知ってるから。
最初に出会ったあの頃から、彼女が誰を好きでいるのかは知ってたから……!

ウィンリィは真っ赤な顔を俯かせた。


「……私…………エドが好き……」


頭が真っ白になる。


「ずっと前から……エドが……好き」


……知ってるよ。

ずっと、ウィンリィもエドも見てきたんだから。


「はい……!私の告白おしまい!」

恥ずかしそうに笑った。
金髪が何とも恋する少女らしく揺れた。

「じゃあ次はフェリアね!」
「…………」


どうしよう……

私も言ってしまおうか?
エドが好きだって。
ウィンリィと同じ人が好きだって。

ウィンリィはどんな顔をするんだろう。
きっとさっきみたいな無邪気に聞いてくる事はできなくなると思う。
困った顔をして、驚いた顔をして、私を敵と見なすのだろうか。

……言いたい。
私もエドがずっと好きだって。
初めて会ったあの頃から、エドしか見ていないって……

勇気を出したら、エドは私を見てくれるのかな?


「…………私も……」





……そんな訳……ない。





「ずっと一緒にいる人が……好き……」


ぱあっとウィンリィは顔を輝かせた。

「やっぱりアルの事好きなのね?!」
「…………うん……」
「さすが私!見抜くの天才だわ~vv」

ウィンリィはもう私の事はお構いなしに妄想に浸っていた。


嘘をついた。

本当の事、言える訳がない。

私はエドともアルとも幼なじみだけど、それ以前にウィンリィと幼なじみで。
ウィンリィがどれだけエドの事が好きか、痛い程知ってる。

ウィンリィがエドの為にシチューを作っては失敗して、
エドが人体錬成をした時も本当に心配して、泣いて、機械鎧手術の時は片時も離れないで、
エドの為にいつも機械鎧の整備をして、いつも傍にいて、エドが旅に出た時は心配ばかり膨らんで、また泣いて、
エドが帰ってきた時は、本当に嬉しそうで……


そんなウィンリィを全て知ってる。
私がやりたかった事を、彼女が全てやってしまった。


だから……そんな『友達』を裏切る事は……できない。


ウィンリィはエドが好き。
エドはウィンリィを好きかもしれない。

このまま行けば、2人は幸せになる。

ずっと心配ばかりしてたウィンリィは、本当の意味で笑顔になる。


だから……言えない。


エドも好きだけど、それと同じくらいウィンリィも好き。

だから…………





「……エドに告白しないの?」


『友達』として、応援しないと……


「え~……まだそんな勇気ないよ……」

恋する少女は目を伏せた。

「……大丈夫だよ、ウィンリィなら……」
「……そうかな……?」
「そうだよ…………」


応援……しないと……


「……うん!……まだ告白できないけど、私頑張るね!」
「……頑張ってね」
フェリアに言えて何かスッキリしたよ~!ありがと聞いてくれて!」
「……いいよ……こんな事ぐらい……」


応援……できない……


泣きそうになって、必死で笑った。
作り笑いは、いつになったら卒業できるのかな?


「じゃあフェリアも頑張ってよ!私協力するから!!」
「……うん、ありがと」
「お互い、女に磨きをかけないとね!!」


……私は磨きをかけても、それは全部アルの為だと思われるんだ。
そんなの意味がない。

エドに思われなきゃ、何の意味もない。


「少しは……エドに可愛く見られたいもんね……」


エドに……

ウィンリィはエドの為に何でも出来る。

ウィンリィはエドが好き。
エドはウィンリィが好きかも知れない。


……私も……エドが好き……


……だから応援するんだと、自分に言い聞かせた。











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これは夢なんでしょうか……私にもよくわかりません。

ただ、多分公式ではエドウィンだと思うから、
ヒロインがエドを好きになっても絶対『ウィンリィ』という障害が残るなぁ……っていう。
幼なじみなら尚更。いちおう私、ウィンリィも嫌いじゃありませんので。