北進して何度目かの休息所となる屋敷で、いつものように作業をしている時だった。

島田に嬉しそうに呼び止められ、理由も教えられないまま外に連れられるものだから、
一体何なんだろうと首をひねるばかりだった。
だがやがて促された眼前には意外な人物が立っていて、紫苑は驚きに目の色を変えた。

「よ、紫苑。久しぶりだな」
「……っ!」

もしかしたらもう会えないかもしれないと思っていた大切な仲間、
永倉が別れた時と変わらない気安さで紫苑を出迎えた。

「……、新八っつぁん!」
「おっ、と……!」

頼れる仲間がいなくて寂しさを感じていた時だったから余計に彼の登場が嬉しくて、
元気で生きていてくれた事が喜ばしくて、他の幕兵がいるにも関わらず紫苑は感極まって永倉に飛びついた。

「はは、お前、何か大胆になったか?」
「……っ」

久しぶりに感じた永倉の体温に思わず涙さえ浮かべてしまったが、
そういえばここは自分達の事をよく知らない人間ばかり。
少し前に啖呵を切ってしまって以来、紫苑を腫れ物のように見て近付いてこようとしない者達の前で、
自分達は男同士なはずなのに、我を忘れてまるで女のように抱き付いてしまった。 

(そうだった……どうしよう!)

永倉はそんな事すら気付かずカラカラと冗談めかしているが、この怪しまれてしまいそうな状況を一体どうしたものか。
これ以上奇怪な目で見られてしまう事はもう構わないが、人前で抱き付いた事が誰より自分が恥ずかしい。
すっかり涙も引いてしまった紫苑は、取り繕うように男っぽく豪快に永倉の背中をバシバシ叩いた。

「ひ、久しぶりだなー新八っつぁん!」
「おう、お前は元気そうだな」
「こっちに合流するのか?」
「多分、しばらくはな。宇都宮に行くんだろう?
だったら目的は同じだからな、一緒に行った方が都合がいいだろうってな」

やはり気付いていない彼は、紫苑の咄嗟の挨拶にも素直に受け答えをして笑っている。
器が大きいというか、細かい事を気にしない性格が彼の良い所だよなぁと紫苑もクスリと微笑む。
顔を見ただけで、とても気持ちが穏やかになっている自分がいた。

「左之さんは?」
「ああ、あいつは来ていない。大事な要件があるって言って、江戸に戻ったんだ」
「そっか……」
「そんな顔すんなって。あいつはそう簡単に死ぬような奴じゃねぇよ」
「……うん」

永倉に会えたなら、やはり原田にも会いたいと思った。
少しだけ残念な気持ちで肩を落とした紫苑の頭を、永倉はガシガシとかき混ぜる。
しんみりした空気になったついでか、慰めてくれるつもりか、真面目な表情で静かに口を開く。

「……聞いたぜ、近藤さんの事。大変だったな」
「…………」

流山で捕縛された事を島田から聞いたらしい。
局長と半ば仲違いのような形で離隊した永倉は、表情を見る限り本当に残念そうな顔をしている。
あんな事があっても、それでも局長を大切に思っている部分はあるという事が垣間見れて、
嫌い合っていなくてよかったと紫苑は思った。

「あんまり気にするなよ?しばらくは俺らもいてやれるから」
「……うん」

紫苑の顔色を窺って、言葉を選んでくれている様子の永倉。
彼は根は良いが基本豪快で大雑把なので、普通の男にはもちろんこんな事はしないし、
町の娘達にも優しくはするが、一生懸命ご機嫌伺いをするような真似はしない。

これはきっと、相手が紫苑だからなのだ。
彼は紫苑の事を弟でなく、ちゃんと妹のようなものとして扱ってくれているのだろう。
どちらかというと子供をあやすような声だったが、
大事に思われている、そして気を遣われている、それが特別な事のように感じた。

だから、彼の為にも今は笑おうと思った。
そして素直な言葉が口から溢れる。

「ありがとう……新八っつぁんがいてくれて、嬉しい」
「おいおい、どうしたんだ本当に?お前に改まって言われると、こそばゆいじゃねぇか」

狼狽する永倉に、紫苑はまた柔らかい笑みを浮かべた。

束の間の、気の休まる瞬間だった。






浅葱 三






総督・大鳥との会議で、土方は先鋒軍の参謀に就く事が決まった。
島田や他隊士は中軍や後軍など三つに軍に配置され、新選組は実質分断されてしまったような形になった。

実戦経験の少ない幕軍を補う為に、戦を経験した新選組の隊士をそれぞれに配置させる。
まともな戦術理論がない新選組もまた、幕軍の頭脳が必要だからとの判断だと、
そう土方から聞かされてしまったら誰も反対はできない、仕方ないとも思っている。

「……俺は、新選組の島田魁としてこの戦に参加するつもりです。誠の隊旗を掲げます」

それでも、と不服そうな島田が宣言すると、皆もそうだと言わんばかりに頷いた。
紫苑も、これで益々心許なくなってしまうと気落ちしていたが、
島田の言葉はバラバラになっても新選組はなくならないと言われているようで、少しだけ安心した。

紫苑はというと、例の如く土方と同じ先鋒軍の配属になった。
先鋒という、いわば前線を担う危険な場所であったが、土方の近くにいられる事は願ったり叶ったりだったので、
紫苑が一層意気込んでいると、しつこいくらいに釘を刺された。

「先鋒だからって、生き急ぐなよお前」
「わかってますよー」
「…………」

はいはいと答えれば、本当にわかってるのか?という疑わしげな目が返ってきた。

むざむざ死にに行くつもりは毛頭ないが、何故だろう、今が一番充実している気がしている。
こんな劣勢の時に我ながら現金だと思うが、土方の目が紫苑をしっかりと見て、気にかけて、
だけど兵力としても重用してくれているだけで、紫苑はいつもより数倍の力がでる。

温かいと思う。
新政府軍に追われ味方も少なくて、こんな肌寒い環境にあるなかでの僅かな温度が、今の紫苑には唯一の救いだった。

そうして三軍に分かれた新選組は、新たな戦地を求めて北へと歩き続けたが、
その誓いから数日後、宇都宮を目指していた軍はまたしても苦難に立たされる。


「まさか宇都宮を官軍に押さえられてしまうとは……予想外だった」

軍の配置を照らし合わせた地図を見つめながら大鳥は苦い表情で呟いた。
江戸城が明け渡されてから、国中の諸藩は新政府軍か旧幕府軍のどちらに付くべきかでかなり動揺していた。
宇都宮藩はまだ決めかねているという話であったが、どうやらこの数日の間で新政府軍が入り込んでいるらしい。

先を越されてしまったという悔しさと、新政府軍と戦う気概のない藩に半ば怒りすら滲む空気が漂う。
だが土方はそれがどうしたと言わんばかりの顔をしていた。

「押さえられたっていっても、単に官軍にびびって恭順した口だろ。
奴ら以上の力を見せつけてやりゃ、すぐこっちに尻尾振ってくるさ」

(……土方さん?)

背後で合議を聞いていた紫苑は、その飄々とした言葉に違和感を覚えた。

「新政府軍に寝返った奴らの城なんざ、落としちまって構わねえだろ?歩兵奉行さんよ」

腑抜けだと、そんな者達は排除してしまえと彼は言っている。
昔から、新選組の隊規を破る者は非情に斬ってきた、だからやっている事はあまり変わらない。
だが今は、その時とは違った異質な言葉に聞こえた。
何となく不穏というか、どうでもいいというべきか、そこに確かな"道"という信念があるように感じられない。
粗野だと言ってもいい。

(……投げやりに聞こえる)

実際、口から軽く出て来たかのような言葉に大鳥も眉を潜めている。

「僕は別に戦うことに反対している訳じゃない。ただ、中軍・後軍はまだ合流しきれていない。
彼らが追い付くまで待ってくれと言っているんだ。城を落とすのは、戦略的に愚の愚とされている。今は――」
「やれやれ、そりゃどこのありがてぇ操典の孫引きだ?お得意の西洋砲術か?」
「…………」

大鳥が落ち着けと言外に匂わしているのに、土方はそれでも彼を煽る。
ついには孫子の兵法まで持ち出しての言い合いにまで発展してしまう。

「やむを得ない時を除いて、城を攻めるのは愚かだと説いているんだよ。
愚を犯すのであれば、せめて自軍を最良の状態にして、確実な勝利を目指さなくては……」
「戦争ってのは時間をかけてうまくやるより、多少下手でも素早くやれって事だとも、孫子の兵法に書かれてる言葉だぜ。
のんびり後続部隊を待ってるうちに、敵の援軍が来ちまったらどうするんだ?
あの射程の長い化け物銃を持った薩長の連中がやって来やがったら、勝てる見込みはなくなっちまうぜ」
「それは……」

大鳥の主張だって間違っていない、確実に勝つなら兵は多い方がいい。
だが実戦は違うと、土方はあくまで意見を曲げようとはせず、場数という経験の差か次第に大鳥が押され気味になる。

「機を逃すくらいなら、俺が先鋒軍だけで城を落としてやるさ」
「それは危険だ!そんなのは戦争ではない、ただの自滅だ!」

慌てて反論した大鳥に、土方はニヤリと笑いながら言い放った。

「自滅?結構じゃねぇか。命懸けで歯向かってくる敵はどうにかなるが、
命を捨てて歯向かってくる敵ってのは、倒すのに骨が折れるもんだ」
「…………」
「…………」

もう何を言っても無駄だと、大鳥は絶句していた。
背後にいる紫苑も、思わず土方のどこか荒んだ目を見つめながら唖然とした。

本当にそのつもりではないと思いたいが、彼の言いたい事はつまり。
命を捨ててもいい気持ちが僅かでもあるという事だ。

(土方さん……)

ぞわりと、紫苑の体を何かが走り抜ける。
彼が独りで行ってしまいそうで、怖い。
こんなに味方がいるのに、それでも誰も信用してないと言いたげに、彼は独りで戦おうとしている。

怖い、このまま彼が消えてしまいそうで。

「ま、黙って見てろよ。明日、日が暮れるまでには宇都宮城を落としてやるさ」

笑いながら遠くを見つめる目には、何が映っているのだろう。
言い知れぬ不安を覚えていた紫苑は、合議を終え立ち去る土方のあとを追った。

重苦しく緊迫した空気を払拭させたいのか、ひやりとした風が吹く夜道を歩く。
二人の足音がさくさくと静かに草を踏む。
付いてきているのはわかっているはずなのに土方は振り向きもせず歩き続け、
紫苑もまた何も声をかけられないまま、少し離れた距離を保つ。

発言だけで読み取るなら、今の彼は自暴自棄になっている。
だが、だからと言って紫苑に何が言えるというのだろう。

敗戦続きで、武力も恐らく新政府軍の方が上で、仲間も一人一人と減り、肝心の局長の安否すらわからない。
こんな状況で、自棄になるなという方が無理な話だ。

(ちゃんとしてとも言えない……それは、土方さんを追い詰める)

誰もが期待している、希望を求めている。
だがそれを、新選組をここまで引き連れて来た責任を、軍を勝利に導く義務を、誰よりも彼が一番承知しているから。
これ以上そんな事を言っても、負担を増やすだけ。

(だから、私に言えるのは……私にできるのは……)

彼は新選組をここで終わらせる気はないだろうと思う。
かなり無謀で危険な賭けだが、あれもきっと状況を判断した上での策なのだろう。

「……土方さん」
「…………」

ついに口を開いても、正面の背中は振り返るどころか返事すらなかった。
適当な所で立ち止まり、ぼんやり空を仰いでいる。

拒絶の空気はない。
もしかしたら紫苑が話しかけるのを待っていたのかもしれない。

「……俺は……土方さんが命令するのなら、どんな事だってやりますよ」
「何……?」

意外だったのか、驚いたような目が紫苑を振り向いた。

「死ねと命じられれば、死にに行きます。それで皆が生き残れるのなら」


だから、生き急がないで。


――「生き急ぐなよ、お前」――


紫苑に向かって言った言葉。
だけどそれは、貴方の方だ。


「……お前」

突然に、流山で沖田と二人、敵中に飛び込んでいった時のような事を言う紫苑
まだ死ぬ死ぬ言ってんのか、とでも言いたげな顔で土方はじっと紫苑を睨む。
眉を顰めた、咎めるような目だったが、
そこにはいつものように非情になりきれない、彼らしい表情が浮かんでいた。
先程までの荒れた気配が消えた事を確認して、紫苑はこの場に似合わない笑顔を作った。

「わかってますよ。死のうとするなって、土方さんが言ったんですから」
「…………」

一見すると、何が言いたいのかよくわからない紫苑の勝手な独り言のようにも聞こえる。
だがそれは、流山で本音をぶつけ合った二人だからこその会話だった。

"死ぬなと言った貴方が、まさか俺を死なせるような事したりしないですよね?"と、
本当に言いたかった事が伝わったらしく、それが合議の時の話なのだと理解した土方は詰めていた息をゆっくりと吐いた。

「……誰もお前に死ねなんて命令しねえよ。それに俺は、自棄になってる訳でもねえ」

大鳥や紫苑に自棄になっていると思われるような発言をした自覚はあるらしい。
自分は正気だと言いたげな顔で、だけどやはり物思いに耽るようにボソリと呟く。

「……ただな、近藤さんがいない状態で、一体どうしろってんだ」
「…………」

それは今までの土方からすれば、かなりか細い声だった。
紫苑に向けて言っているというよりはむしろ、
積もり積もってどうしようもなくなった鬱積が溢れた、投げやりな独白だった。

「新選組ってのは、俺と近藤さん二人のものだったんだ……俺一人で支えきれる訳ねえだろ」

絶対に"鬼の副長"を崩さなかった彼が、ぼやくように弱さを露見させている。

新選組を重いと初めて口にした土方に、紫苑は言い知れない胸の苦しみを感じた。
夜空を見上げているのに、世界を遮断するように遠い目をする横顔を見ているだけで苦しくなる。
どうにかしてあげたい、そんな衝動ばかりが湧き上がる。

「必死こいて剣術の稽古して、ようやく刀差せるようになったってのに。
農民や町人に銃持たせただけの長州の軍隊に歯が立たねえときた。
……俺達がずっと信じて追いかけてきたものって、一体何だったんだ……?」

甲府城へ進軍した時、大砲や軍資金を用意してくれたのは勝安房守だったが、
その勝が江戸城を新政府に明け渡す事を決めたらしいと後になって知った。
戦嫌いだと有名な彼が何故甲府行きを命じたのか、その時からの疑問が、無血開城によって確信に変わった。

新選組は、江戸から体よく追っ払われたのだ。
どこまで行っても自分達は、世界から追い払われる。

「武士になりたくてここまできて……その先に何かがあるって信じてたからこそ、きつい思いしてこれたんだ。
近藤さんがいなくなったら俺は、何を信じて生きていきゃいいんだ……」

彼もまた、途方に暮れている。
きっと目標を、生きる意味を見失っている。

それはそうだ、近藤は彼にとって道標であり光であり、友人として彼の支えになっていたのだろう。
一人で立っていられない、そう言っているかのように今の土方は危うく感じる。

「…………」

そんな人に、これからの全てを任せるのは酷だ。
頑張れなんて、とてもじゃないが言えない。

できる事なら紫苑が代わりに支えたいとは思うが、それはやはり近藤にしかできないのだろう。

紫苑では、彼に道を示してやれない。
何も言う権利なんて、ない。

(それでも、少しでも土方さんが楽になれるなら、何でもしたい……)

抱き締めたくなるような衝動を抑えて、考える。
できるのは、今のあの人が決めた道を、全力で切り開かせるぐらいしかない。

支えられないのなら、彼の障害を最大限取り除いてあげたい。
そうすればふらつきながらでも、ゆっくりでも進んでくれるかもしれないから。

無謀を、確実にする事。

「……勝って……みせますから」
「……紫苑?」

淋しい空気が流れる中、紫苑は静かに言葉を零れさせる。
返事が返ってくると思わなかったのだろう、そしてまたもや唐突な台詞に土方は聞き返す。

「だから、私を信じてください」
「何言ってんだ、お前……」
「俺は、"新選組"です。近藤さんと土方さんと、皆が作り上げた新選組を、信じてください。
新選組は絶対、土方さんを裏切らない」
「…………」

もしかしたら、自分達以外は全て敵のような今の世界に、信じるものなんてないのかもしれない。
だけど自分達が作ってきた"新選組"は、紫苑にとっては帰る場所であり、仲間の想いが詰まった象徴で、
大切な家族であり、そして信じられるもの。

紫苑だけでなく隊士達も少なからずそう思っているからこそ、局長や副長を信じて付き従っているのだろう。
未来を見せてもらう為に戦っているのではない、それぞれが未来を切り開く為にそこにいる。

数は関係ない、"誠"で築かれたこの志の塊は、未来を切り開く為に戦っている。
紫苑や隊士達が新選組という希望を抱いているように、彼だってそれを拠り所にしてもいいのだから。

「新選組はもう、近藤さん達二人だけのものじゃないんです。もっと、俺達を頼ってくださいよ」


――道を失ったのなら、振り返って欲しい。貴方の後ろには、私達がいる。


独りで歩く必要なんて、ない。
支えられないかもしれないけど、何があっても皆……自分が傍にいるから。

「何も信じられないなら、俺を信じてください。土方さんの策は……新選組が――俺が成功させます」

自然と、溢れた言葉だった。
だけどそれは少しずつ強さを持ち、確かな意思となって紫苑の瞳に宿る。
まさかそんな事を言われるとは思ってもいなかったのか、土方は唖然と紫苑を見つめていた。
言葉の意味を呑み込むようにして視線を左右に揺らし、そうして彼もまたゆっくりと口を開く。

「……お前が、新選組を背負う必要はねえんだよ」
「それはしょうがないです。俺も新選組の一部なんですから」

思わずといった様子で漏れた返答に、紫苑はニヤリと笑う。
何故だろう、今なら何でもできる気がした。
怖いものなんて、ないように思えた。

「それに、土方さんの分が軽くなっていいじゃないですか」
「…………」

飄々と言った紫苑に、またしても二の句が継げない様子の土方。
少し前まで果てない闇に覆われているような、やるせない気持ちに襲われていたはずなのに、
紫苑の冗談めいた誓いに土方もまた、体の奥の何かが緩んだ。

「大層な事を自信たっぷりに言いやがったな……お前一人で何ができるってんだ。
……でもお前なら、何とかしちまいそうな気がする」

不思議と、淡い笑みが浮かんでいた。
自滅だと言われた明日からの作戦に、光が照らされたような気分だった。
紫苑の言っている事だって無謀なはずなのに、心強ささえ感じてしまった。

彼女は本当に何とかする気でいるのだろうと土方は思う。
男とは違う華奢な体で、羅刹の身で、それでも笑いながら。

「頼むから……死んでくれるなよ」
「……はい」

覚束なくなっていた足元が、地面を踏みしめている。

独りじゃない、それを感じられただけでも救われた気がした。











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主人公の一人称が私と俺とごっちゃになってます。