※この話には18禁相当の性描写がありますのでご注意下さい。
苦手な方はこの話だけ飛ばしてお読み下さい。





















北の大地の夜は長い。
淡い月に照らされ、部屋の灯りで伸びた二人分の影が妖艶に揺れる。
日の光がなければ途端に寒さに震えてしまうのに、自分達は熱に浮かされていた。

上体を起こされ、背中から抱きかかえられると土方の体温が感じられて安心する。
その一方で、弱々しく開かれた足の付け根には彼の手があって、
目に飛び込んでくるその光景に耐えられず紗矢は目を閉じた。

紗矢が初めてだという事を知っているだろう彼は、本当に丁寧に触れてくる。
丁寧すぎて、もう早く終わらせて欲しいと思うぐらいに執拗だった。

「も、……、や……ぁっ」
「ああ」

小さな悲鳴に返事をしながら耳を舐められると、鼓膜に水音が響いて余計に翻弄される。
その隙に、一番敏感な突起を何度も擦られて頭まで痺れが走る。

「あ、…っ、や…!?」

経験した事のない、何かが体の奥からせり上がってくる感覚に紗矢は恐怖を覚えた。
自分の身に何が起こっているのか、訳がわからない。

「や、やだ……っ、怖い!」
「大丈夫だ、怖くねえ……」

思わず首を横に振りながら彼の腕にしがみ付くが、それでも刺激は止まらない。
熱い声に囁かれて、頭が一瞬真っ白になったかと思うと体が跳ねた。

「!―――はぁっ……はぁ、」

大きな波に流されてぼんやりする意識のなか、また背中に柔らかい布団の感触が触れる。
軽く口付けられ、その甘さに酔っていると、敏感な場所に熱いものが当てられた。

紗矢……っ」

切羽詰まった声に、紗矢の胸がきゅっと詰まる。
鬼副長である事を自身に課し、鬼でい続けた彼の、内側の声。

顔を上げれば、真っ直ぐな双眸が一心に紗矢を見つめている。
いつもは冷たいぐらいに鋭く強い色が、今は欲に揺れている。
彼の本当の心に触れられた事が嬉しくて、いつの間にか涙が溢れていた。

「愛してます、土方さん……っ、今までも、これからもずっと、最期まで……」


――私は彼を守れていただろうか、支えられていただろうか。

わからないけど、彼が同じ表情で笑い返してくれたから、少しは役に立てたのかもしれない。


「っ……!」

痛いぞ、と言われた通りに貫かれた衝撃はかなりのものだった。

「っ、……大丈夫か?」
「大丈夫、です……このぐらいの痛み、何て事ないです……っ」

これよりももっと痛い怪我を何度も負ってきた。
斬られて、撃ち抜かれて、気絶しそうな痛みで夜を過ごした事もあった。
だから全然平気だと笑ってみせると、眉を顰めたいつもの表情が見える。

「馬鹿野郎、痛みに慣れてんじゃねぇよ……」

苛立ちのまま噛み付くように唇を塞がれる。

「嬉しいから、いいのに……」
「俺はそもそも、お前に傷を負わせたくなんかねぇんだよ」

ああ、やっぱり優しい人だと思った。
紗矢が受けた傷は全部紗矢が選んだ道の先にあったもので、彼が気に病む必要はない。

「鬼副長の、くせに」

非情な命令を下す立場なのに、冷酷になりきれない鬼。
そんな人だから紗矢はこんなにも好きになってしまった。

「土方さんの、望むままにしてくれて、いいんですよ」

慈愛に満ちたような、玲瓏な瞳の紗矢に見つめられ、今度は土方が息を詰める。
もう、どうしようもなく土方はこの目に弱い。

「、……お前な……あんまりそういう事言うなよ……っ」

手加減してるんだよこれでも、という言葉は寝台の軋む音に消えた。

好きに動いてくれればいいのにと思う。
だけど結局彼は優しくて、此方を気遣いながら動いて。

あの日、紗矢を見つけて試衛館に呼んでくれた、あの時のままの彼だった。

強く握られた手を握り返して、二人は一つになる。
この先どんな未来が待ち構えていても、今日の記憶があれば生きていける、
そう思えるほどに今この瞬間が愛おしい。

「っあ……、と、し、さん…っ」
「!……懐かしい、な」

いつか、全てが終わって、彼が鬼でいる必要がなくなった時。
その時に紗矢がまだ生きていれば、また昔のように呼びたいと思っていた。
譫言のように呟けば彼は気恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに頬を緩ませてくれた。

絶対実る事はないと思っていた女としての想いが掬われ、息が絡み合う。
ぽたりと落ちてくる汗が、零れる涙と一緒に流れていく。

全速力で駆け抜けているような呼吸のなかで土方の苦しそうな声が聞こえ、やがて弾けた。











眠る事すらしなかった彼が、紗矢の隣で微睡んでいる。
「大丈夫か」と気遣って紗矢を抱き寄せ、自分も布団に体を預けている。
時折意識を手放しながら、ふとするとまた紗矢の髪を弄っている。

そんな土方を見つめて、紗矢はくすりと笑うと体を寄せる。

「どうした?」
「……いいえ」

これが彼の休息になってくれればいいと思ったけど、その前にかなりの運動をしたのだから余計に疲れさせてしまったかもしれない。
けれど、筆を持って机に向かうでもなく、こうして横になってぼんやりしているだけでも紗矢としては嬉しかった。

「はあ……仕事、しねぇとな」
「まだやるんですか?」
「…………」

頭の回転が速い彼にしては長い思考の後、気怠い声で呟く。

「……今日ぐらいは、いいか……お前いるしな」

おおよそ仕事の鬼らしくない言葉に紗矢はまた微笑んだ。
そして二人で体を寄せ合いながら、明日までの僅かな時間を睡眠に使った。

どうしたら彼を寝させられるのだろう、その答えを意外な形で知ったのだった。











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短いから話を分ける必要もなかったんですが、前半の真面目な話からの突然展開なので、自分的に区切りを付けました。

こんな情勢なので、吸血衝動とかで血が昂ぶったりしない限り甘い雰囲気にならないだろうなと考え、こんな感じで濡れ場を迎えました。
私のなかではこういう時、土方さんはあまり喋らないイメージ。