絶望していた。自分に、この世に。
何より大切だったものはこの手から滑り落ちて、でも私は生きていた。
私は太陽を、探していた。
悔しい……死にたくない。
こんな所で死にたくない。
どうして……正しい事が正しいと言えないの?
どうして……正しくない者が勝つの?
私達は正しい事をしてきたはずだ、それなのにどうして滅びなくてはいけないの?
正しくない者が権力を振りかざし、正しい者を滅する。
戦と、腐敗と、金と、裏切りばかり。
こんな世はおかしい。
こんな世に生まれた自分が憎い。
最後の最後まで何もできない自分が憎い。
私は何の為に生まれてきたというんだ。
守るべき者も守れず、ただ生き長らえ、
それでもまだ出来ることがあるかもしれないと藁をも掴む気持ちで生きてきたのに。
もう何度、主の死を見なくてはいけないのか、何度仲間を失えばいいのか。
私達はただ……笑って過ごしたいだけだったのに。
悔しい、こんな世の中が。
悔しい、こんな自分が。
死体だらけの荒野、折れた槍がただ力なく地を突き立てる。
現在の主であった人は、今しがた目の前で死んだ。
私の力を認めてくれた人だった、もう何人目かの主かは忘れてしまったけど。
それでも一応志を同じくした者同士、曲がりなりにも信頼はあった。
この世を正そうと……民の為に、家族の為に戦ってきたはず。
だが結局、私達は負けた。
真っ赤な視界の向こう……目の前で勝者の笑みを浮かべている人間達が許せない。
賄賂で不公平な政治を行っていたのはあいつらの方なのに、何故あいつらが生きている。
「…………どう……して……っ!」
痛みを忘れるほどのこの屈辱、それだけでズリズリと地を這う。
唯一動く左手だけじゃ、敵どころか死体の一つすらも越えられない。
あの槍さえあれば、敵を貫けるのに。
私は……非力だ。
志があっても、思いが正しくても、力がなければ死ぬ。
これが戦国の世……力だけが全ての時代。
憎い。
この世が憎い、自分が憎い。
「わ、たしは…………た…だ…………っ…」
こんな世を変えたかっただけなのに。
このまま……無念のまま死ぬことなんてできない。
死にたい、もう死なせてほしい。
でも、死にたくない。
「…………っ……しに、たく……ない……っ!」
あの人が目指した世にできないまま、死にたくない。
誰か…………誰でもいい……
私はただ……義のなかで……死にたい、だけ……
ふいに新たな蹄の音が響いたのは………まだ意識が飛んでしまう前。
そこからは、あっという間だった。
――悔しくて、悔しくて、どうしても生き残りたかった
だけど本当は、死に場所を探していたんだ―――
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序章は敗北から。